ついてるのライトな感想文

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【レビュー】七つの魔剣が支配する

 七つの魔剣が支配する

 

七つの魔剣が支配する(1) (電撃文庫) [ 宇野 朴人 ]

価格:759円
(2020/6/7 21:28時点)
感想(1件)

春―。名門キンバリー魔法学校に、今年も新入生がやってくる。黒いローブを身に纏い、腰に白杖と杖剣を一振りずつ。胸には誇りと使命を秘めて。そんな魔法使いの卵たちを迎えるのは、桜の舞う満開街道と魔法生物たちのパレード。が、希望に胸躍らせるのも束の間。キンバリーの孕む数々の脅威が彼らに襲い掛かる。気まぐれに生徒を飲み込む地下迷宮、怪物じみた上級生たち、亜人種の人権を巡る派閥の対立―。そんな魔境を仲間と生き抜く中、オリバーは一人の少女と縁を結ぶ。腰に日本刀を提げたサムライ少女―ナナオ。二人の魔剣を巡る物語が、今、始まる。

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アニメ化もされた「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン」の作者、宇野朴人先生の新作。このラノベがすごいにて1位を受賞したということで購入しました。 

 

話はキンバリー魔法学校に主人公、オリバーが入学するところから始まります。そこでオリバーは少し世間知らずで正義感の強い少女カティ、明るく気さくなムードメーカー的存在のガイ、頑固で気難しそうな見た目とは裏腹に勤勉で実直な少年ピート、名家出身で誇り高いが決して他者を見下したりせず偏見のない少女ミシェーラ、そして東方出身で明るいが独特の感性や考え方を持つサムライ少女ナナオと出会います。彼らは皆が皆とてもキャラが立っており掛け合いが面白く、これからの学校生活をそれぞれが補い合って生き抜いていく良きグループになることを予感させます。

 

そんな個性的な彼らが生活する学校も個性的で、調合や魔力操作といった魔法学校らしい授業や、動く階段、気さくに話しかけてくる庭園の植物に魔法を使う生物を「え?この学校だったらそんなことも起こるでしょ」と当然のように描写しており、そこはハリーポッターの世界観をを想像してもらえるとわかりやすいかもしれません。ただ、ホグワーツと大きく違う点がいくつかあります。それは、ここキンバリーでは命の保証はされず、卒業までに約二割の生徒が命を落とすということです。時には学友同士で殺しあうこともあるでしょう。そんな危険が日常に過ぎないキンバリーでオリバーたちは今日も他愛もない会話をしながら過ごしていきます。この何が起きてもおかしくないハラハラ感と、ハリポタのような独特の世界観というか雰囲気がとても心地よく、読んでいて作品に引き込まれていくようでした。

 

作中では普段の学生生活だけでなく、人語を喋れないものの確かに知能のある生物の人権問題など、現実でも起きているであろう問題をこの作品風に置き換えて取り上げていたりして読者にも何か考えさせるような側面も持っていると感じました。

 

最後にメインヒロインと主人公についてですが、ナナオはかつて戦場で死に損なった過去があるせいか、どこか投げやりで今ここで死んでもかまわない、どころか死に場所を求めるような戦闘を繰り広げていきます。普段は明るく天然を発揮してはミシェーラに面倒を見てもらっているのですが、死に対する抵抗のなさといった闇も抱え、非常に魅力的なキャラです。

 

オリバーについては全てにおいて卒なくこなし、思慮深く冷静に分析をしたりするタイプですが、ナナオが死を急ぐときちんと叱って諫めたりと情熱的な一面も持っています。外交的で分け隔てなく周りと接しますが、どこか周りと少しだけ距離を作るのは、作品全体を通して彼の背景に色々とあるような描写がされているのと関係があるのかもしれません。

 

「七つの魔剣が支配する」は、この非日常が日常のキンバリーでオリバーがナナオたちと共に課題や行事をトラブルに巻き込まれながらも助けい合うことで進んでいく作品なのだと、思っていました____。

エピローグを読むまでは__。

この作品はそういう作品であると、そしてこの作品の進むであろう道が、

最後の30ページで認識を180度変える展開が待っています。

自分の目で確かめてみてください。

 

 

ポイント

 

1.  個性豊かなキャラたちの掛け合いや、関係性が本当にいいです。

一巻では色恋沙汰はそこまで無かったの今後に期待したい。

 

2.  世界観が完成されていて作品に入り込んで読むのが楽しくてたまりません。学校の様子を想像するのも楽しい。

 

3.  闇の部分の描写が多く今後の展開を思うとワクワクします。まだまだ一巻では謎のままのことも多いですしね。

 

4.  エピローグの30ページ。言わずもがな。